障害年金事例
事例6 健康診断は初診日にならない?〜統合失調症〜
 S男さんは高校3年生の頃より学校の早退が増え、体が痩せてよく眠れない日が続きました。浪人し予備校へ通うことになりましたが、頭痛、腹痛、下痢等の体調不良と、幻覚や妄想と思われる言動があり休みがちでした。母親は病院へ行くことをすすめましたが、S男さんは「病気ではない。」「病院へ行くなと言っている。」などと言ってかたくなにそれを拒みました。母親は思案し「痩せて顔色が悪いので健康診断を受けよう。」と誘い、19歳のときに大学病院で健康 診断の身体診察・胸部レントゲン検査・尿検査を受けましたが、診断は「異常なし」でした。
 その後も脈略のない話をしたり突然怒り出すなどの言動と体調不良があったものの、健康診断で「異常なし」と言われ本人が病院を嫌がったこともあり、6年間病院へは行きませんでした。母親一人で頑張って面倒をみてきましたが、とうとうS男さんは寝たきりの状態になってしまいました。母親は「検査をするから。」と必死で本人を説得し、初めて精神科の門をたたいたのでした。
 母親は家族会などの情報から障害年金を知り、裁定請求しようと役所へ相談に行ったのですが、「初診が精神科ではないから受給できない。」と何度も断られました。その後ロコミから私を知り直接電話をされてきたのです。
 役所での話はもっともな話に聞こえますが、初診がその傷病の専門科でないケースは案外多いものです。私は、裁定請求書類一式を作成し、窓口である役所へ提出に行きました。受付で は「初診が精神科ではない。」と提出自体を拒まれましたが、1時間以上かかって抗弁し、書類は何とか受理されました。
 結果はというと・・・不支給でした。理由をまとめると、「異常なしとされた健康診断日は初診とはせず、三番目に行った病院を初診とすると保険料納付要件を満たしていない」という ものでした。不支給はもちろん二番目に行った病院が無視されたことにも驚きました。
 すっかりあきらめかけた母親を励まし、審査請求を行うことをすすめました。母親と知人の申立や統合失調症についての医師の意見、事例の収集等をし、手続きを行いました。準備の途中、心の支えとなったのは「決して悪意を持って健康診断を受けたわけではない。」ということでした。初診の健康診断の証明書にある受診した理由は「不詳」で内容は「異常無し」ということでしたが、これが原因で初診日と認めないならば、なぜどこも具合の悪くない19歳の浪人生に、わざわざ親がお金を払って健康診断を受けさせたのか・・・ということになります。また、精神的な病気からの体調不良だったわけですから、検査の数値に異常がでないのは当然といえば当然です。
 審査請求の結果は・・・障害基礎年金2級の受給が決定しました。S男さんの母親とはお電話をいただいてから年金の支給まで1年3カ月のおつきあいとなりました。病気が発症してから今までのご苦労を伺い、ご自身も体調を崩されながらも協力してくださったことなどが胸に迫り、今までにない嬉し泣きを経験させていただきました。
 この案件をはじめ多くの事例から、障害年金の入り口でその路を閉ざされてしまっているケースは大変多いのではないか、というのが実感です。また、不当な「不支給」という結果を受けあきらめてしまっている方も多いのではないでしょうか。ご本人と家族だけで手続きをして障害年金を受給する、また障害の状態に合致した等級で受給する、ということを可能にするためには、様々な困難が伴います。裁定請求の委託をされた方には、「自分ではとてもできなかったと思う。」「お願いして良かった。」と喜んでいただき、それがこの仕事を続けるさらなる原動力となっています。これからも日々研鑽を積み、頼れる存在でありたいと願っています。

社会保険労務士 T.N(埼玉県)

NPO法人 障害年金支援ネットワーク ( フリーコール:0120-956-119 )