障害年金事例
事例4 年金支給の一部に不服あり
 その日年金相談に来られた仲田(仮名)さんは、右足を引きずりながら杖を突いておられました。そばで奥さんが心配そうにされています。
 一目で下肢に障害があるのが分かりますが、事情をお聞きすると、5年5ヵ月ほど前に労災事故に遭ったということでした。そのときに障害厚生年金の請求をご自分でされたのですが不支給になり、この日の相談会を知り、わざわざ遠いところを来ていただいたということでした。
 日常生活の様子などをお聞きした私は、何とかなるのではないかと思い、障害年金の請求業務を受託しました。
 後日仲田さんのご自宅に伺い詳しいことを聴取しますと、厚生年金保険は、障害手当金相当との認定をしていたことが分かりました。一方、労災保険からはすでに、障害補償一時金が支払われていることも分かりました。つまり、労災保険から障害補償給付を受けているため、一時金である厚生年金の方は不支給になっていたのです。
 仲田さんは賢明にも、当時の請求書の一件書類を持っておられましたが、その診断書を見ますと、ずいぶんいい加減な記載がされていました。とても当時の障害の状態を、適正に判定しているとは思えないのです。もっとも、そのときの請求は仲田さんがご自分でされたため、本人が作成する申立書が適正を欠いていたことにも、問題はあると思います。
 さて、当時の主治医は今はもうおられないため、私はとりあえず、今の主治医に適正な診断書の記載をお願いしました。そして添付書類として、当時から現在までの状態を、できるだけ詳細、正確に記載した申立書をつけて裁定請求したところ、障害認定日まで遡及して年金を支給するとの証書が届きました。仲田さんは、大変お喜びになりました。年金が支給されるようになったばかりか、何年もの過去の年金が一度に入ってくるのですから、その額も大きいのです。
 しかし、私はこの決定には不服がありました。実は、障害等級が3級だったのです。
 保険者が、年金の支給を何年もさかのぼって認めたのは、当時障害手当金相当とした判断が間違っていたことに気づいたからです。そのことに私も、不服はありません。しかしながら今の状態は、私たち専門家が見れば、法令に照らして2級相当であることに間違いありません。
 そこで私は、仲田さんに委任状をいただき、原処分のうち、認定日において3級であることには不服は無いが、請求日においては2級相当なので、請求日から障害等級を2級に改定するとの決定を求めて審査請求をしました。
 結果は、審査請求の趣旨どおりの決定でした。
 審査請求の趣旨は、通常「○○の原処分を取り消すとの決定を求める」ということですが、今回は、処分の一部の取り消しを求めて容認された事例です。

(社会保険労務士 M.T)(奈良県)

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