障害年金事例
事例1 主治医のいない軽度の知的障害者の障害年金請求
 ご本人は、知的障害があるものの、中学校までは普通学校に通い、その後、養護学校の高等部に進学。本人・家族の希望と養護学校進路指導担当者・ハローワーク等のサポートもあり、卒業と同時に就職することができた。知的障害としては比較的、軽度の方であった。
 しかし、勤務先では、特定の従業員に対して暴力的になり、家庭においても、就労のストレスのためか、大声で暴れることが度々あった様子。それでも、職場の理解があり家族もサポートして、勤務を継続していた。周りに支えもらいながら、どうにか安定した生活を送っていたが、就職して8年ほどたったときに、事業所が閉鎖となり、職を失なうこととなった。
 その後の再就職が思うようにいかなかった。身だしなみはできており、質問にも「はい」、「いいえ」の返事は可能。面接だけでは、問題行動はあらわれない。しかし、実際に働き始めると、なかなか仕事を覚えられず、繰り返し注意を受け続けるとストレスがたまるのか、大声を出したり、暴れたりする。長くて半年、短ければ1日で、解雇されていた。就労している間は、家庭でも大声を出し暴れるなどの問題があったが、無職の間は、ストレスがたまらないためか、比較的穏やかに過ごしていた。
 そのような状態が約10年ほど続く。特に、最後の2年は、ほとんど働いていない状態になった。父親が定年を迎えたこともあり、両親とも将来に不安を覚え、障害年金の請求をネットワークに依頼した。
 面談の際、私の質問に、「はい」「いいえ」であれば、答えることができて、委任状に住所と名前を漢字で記入した。しかも、住所を書く際、「○○県は、いるか(都道府県から住所を書くのかという意味)」と質問するぐらいであるから、知能指数も低くないと感じた。同席していた母親からも、「最近は、仕事をしていないので、暴れることもない(仕事が無いこと以外は、あまり困っていない)」とのこと。
 知的障害は先天性の障害であるので、初診日の証明は不要。しかし、医師の診断書は必要。医師も精神科の医師であることを求められる。通常、知的障害で、他に精神疾患がなければ、精神科の受診はしていない。念のため、母親に確認すると、精神科はもちろん、他に病気もなく、主治医と呼べるような医師はいない、さらに、障害者団体とも無縁であるので、全く情報がないとのこと。
 まずは診断書を書いてくれそうな精神科医師を探すこと。そして、本人の障害を適切に診断して頂けるよう、医師に、診断書作成資料として、生育歴や職歴をまとめることとした。
 県のリハビリセンターに、知的障害者更正相談所が併設されており、診断書もリハビリセンターで書いてもらうのが適当であろうと考えた。ただ一つ気がかりがあった。それは、同時期に、同じ知的障害者の審査請求(年金を請求したが不支給となった不服申立)の依頼を受けていて、その請求時の診断書作成医師がリハビリセンターの医師であり、その診断書の内容が、ご本人の状態と比較してやや厳しいように、感じたことであった。療育手帳の更新判定を20年近く受けていなかったため、療育手帳の更新と年金診断書について、知的障害者更正相談所にたずねた。手帳の更新と年金診断書は、いずれも予約制で、午前に手帳の更新、午後に年金診断書の受診のスケジュールであれば、1日で終わることが可能。診断書作成を他の病院でされるのであれば、手帳の判定資料等を提供することも可能とのこと。
 次に、障害基礎年金の受付窓口である市役所と県の障害者向けの相談電話とに、知的障害者の年金診断書を書いていただける医療機関の情報収集を行った。いずれも、余り聞かない相談のためか、あるいは、具体的な病院名を挙げることに抵抗があるためか、「どこでも、書いていただけると思いますよ」などと、あいまいな返事ばかり。「客観的な情報でなくとも構わない。あなたの個人的な経験や感覚で構わないので、具体的な医療機関名を二つ三つ挙げて欲しい、もちろん、口答で結構」と食い下がると、いくつかの病院が出てきた。その中で、自宅近くの病院2箇所にたずねると、いずれも、「まったくの初診であれば、最低2回は受診していただかないと、書けない」との返事であった。いろいろ思案した結果、リハビリセンターで診断書を書いてもらうことにした。
 生育歴・職歴をはじめ、学校・家庭・職場での様子、エピソードなどと、現在の起床から就寝までの生活状況を何度も家族に伺いながら、まとめた。手帳の判定・診断書作成受診の当日は、母親が不安であるとのことで、付き添うことにした。
 当日、相談所職員より、「過去の本人の記録を探したが見つからなかった。もしかしたら、判定や受診に時間がかかり、遅くなるかも知れない」とのこと。当方より、「年金診断書の参考資料用に、生育歴から現在の様子を、まとめてきているので、手帳の判定の参考になるのであれば、参考にして欲しい。」と、資料を相談所職員に手渡すとともに、母親が不安がっているので同席を要望した。相談所職員も助かる旨、答え、同席も許可された。
 その後は、私の資料にそった質問が多く、母親も返事に困ることもなく、非常に順調に、手帳の判定、診断書作成の受診とすすんだ。午前9時から始め、午後1時には、診断書を入手し、病院を後にした。当初、判定・診察の合間に、病院の食堂で昼食をとる予定であったが、午後1時30分ごろ、ファミリーレストランで、遅い昼食を3人でとることとなった。判定や受診が順調にすすんだのと同様、診断書の内容も、順調?であった。
 結果も順調に?2級の障害基礎年金が受給できた。

社会保険労務士 H.K(奈良県)

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